着床外来について
着床外来はより詳しく着床能を調べることを目的として開設しました。
良好胚は得られるにも関わらず、妊娠に至らない方、着床能について詳しく調べたいご希望のある患者様はご相談ください。
他院受診中の患者様も着床外来のみの受診も可能ですが、感染症などの確認の採血を受けていただく必要があります。
着床とは
受精卵(胚)が子宮内膜に接着し、浸潤し、妊娠が成立する一連の過程を指します。
体外受精・胚移植(IVF-ET)で良好な胚を戻したにもかかわらず妊娠に至らない場合などは、着床に問題がある可能性があります。
不妊治療初期から詳しく評価することで、妊娠に近づける可能性があります。
下記の検査を組み合わせることにより、着床能を多角的に調べることができます。また、内容に応じた治療を行うことができます。
* この検査周期では移植は行いません。検査のみです。
慢性子宮内膜炎検査パック
慢性子宮内膜炎は、主に細菌性病原体による子宮腔の感染に起因する子宮内膜の持続的な炎症です。不妊症の女性の約30%が罹患し、反復着床不全(RIF)患者および不育症(RPL)患者の有病率は60%に達するにもかかわらず通常は無症状なため、確認できずに慢性子宮内膜炎が見逃されることもよくあります。
※検査を行う周期は絶対に夫婦生活を行ってはいけません。感染症採血の結果を聞いていただいてから検査を組めます。
体外受精した胚をお持ちで、人工周期で移植を検討の場合
① 月経2-3日目
必要な薬剤を処方します。
シネMRIの予約を行います(対象者のみ)
② 月経8-11日目
子宮鏡検査 を行います。
③ 膣座薬開始4日目
シネMRI検査を行います(対象者のみ)
④ 膣座薬開始5-6日目
子宮内膜組織検査(CD138染色)および膣培養検査を行います。
子宮内フローラ検査を行います。
※手技による感染予防のために、抗菌薬を内服いただきます。
⑤ 組織検査の3週間後以降
病理検査結果説明 方針相談
子宮鏡検査
子宮内を観察することのできる内視鏡で、外来で行うことができます。
着床には子宮内の環境が非常に重要です。子宮鏡により、慢性子宮内膜炎の所見の有無、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫の存在などを調べます。これらにより着床が妨げられることが分かっています。
子宮内膜組織検査(CD138染色)
慢性子宮内膜炎の子宮内膜においてCD138という細胞マーカーが陽性の細胞の浸潤が認められます。子宮内膜組織を採取し、特殊な病理検査を行うことにより、慢性子宮内膜炎の診断を行います。
ALICEとの違いは、ALICEは次世代シーケンサーを用いて菌の遺伝子を検出する検査であるのに対して、子宮内膜組織検査は組織の染色で病理学的に診断する検査であるという点です。
膣培養検査
生殖器内は外気に触れる皮膚と同じように、様々な細菌が共存したフローラ(細菌の集合体)を作っています。 腟内に存在する善玉菌(ラクトバチルス属)は、ウイルス感染や他の菌が増殖できない環境を作ることで、胎児を 感染症から守る役割をしていることが知られています。
子宮内フローラ検査
2015 年に米国ラトガース大学の研究者らが子宮内にも 善玉菌が存在することを見つけ、2016 年には米国スタンフォード大学のサイモン博士らが、子宮内フローラが 乱れていると体外受精の結果が悪くなることを発見しました。子宮内フローラが乱れ雑菌が増えると、子宮内膜で 免疫が活性化し、受精胚を異物として攻撃してしまう可能性が指摘されています。
シネMRI(対象者のみ)
子宮の蠕動運動を観察します。子宮筋腫や子宮腺筋症の手術適応を検討する際に行うことがあります。
※それぞれ単体で行っても情報として不十分です。多角的に評価することにより、治療を検討します。
【 合併症 】
出血:組織を採取するために出血を伴います。生理用ナプキンをご持参ください
感染:内膜採取の際に感染を起こるリスクがあります。予防的に抗菌薬を内服いただきます。
迷走神経反射:痛みを伴う可能性があります。緊張により貧血様症状、気分不快を起こされる可能性があります。
料金について – 慢性子宮内膜炎検査パック
子宮鏡 | 15,000円 (子宮鏡検査単独の場合は20,000円) |
子宮内膜組織検査(CD138染色) | 20,000円 |
膣培養検査 | 3,000円 |
子宮内フローラ検査 | 50,000円 |
シネMRI(対象者のみ) 紹介状代(その他MRIの代金がかかります) |
5,000円 |
ERA(エラ)検査
ERA(子宮内膜着床能検査 Endometrial Receptivity Analysis)
かつてより、受精卵(胚)を受け入れる適切な時期があることはいわれていました。これを、着床の窓(着床ウィンドウ)といいます。移植しても妊娠に至らない場合、 実は遺伝子レベルでは着床の準備が整っていない場合があります。
この検査の目的は受精卵を移植する日の内膜が着床可能状態にあるかを遺伝子レベルで調べることです(RNAを用います)。
子宮内膜に受精卵が着床できる時間や時期には個人差があり、着床の窓(着床ウィンドウ)の開いている、適切な時期に受精卵を移植することにより妊娠の可能性を上げることができる可能性があります。
これまで 全世界3万を超える臨床例によって、ERA検査を受けられた方の30%近くが着床の窓(着床ウィンドウ)の時期がずれていたという結果が分かっています。
各患者様に適した移植時期を特定することにより、妊娠率が24%上昇したという報告もあります。
人工周期で子宮内膜を肥厚させ、凍結胚移植を行うタイミングで子宮内膜を採取します。子宮内膜のRNAを解析に用いるわけですが、RNAは非常に不安定で分解されやすい性質があります、検体を直ちに専用の溶液と混合し、4℃に冷やし、スペインのラボに空輸します。スペインの次世代シークエンサーを用いて解析を行います。
※こちらの検査は体外受精・胚移植(IVF-ET)の治療を行っている患者様が対象です。
※上記慢性子宮内膜炎検査パックと同周期に行うことも出ます。ご相談ください
【 合併症 】
出血:組織を採取するために出血を伴います。生理用ナプキンをご持参ください
感染:内膜採取の際に感染を起こるリスクがあります。予防的に抗菌薬を内服いただきます。
迷走神経反射:痛みを伴う可能性があります。緊張により貧血様症状、気分不快を起こされる可能性があります。
ERA検査 150,000円