
赤ちゃんが欲しいと思っても、なかなか妊娠しないときに気になるのが「不妊症」という言葉。これまで自費で行われていた不妊治療も保険適用となり、また女性の社会進出に伴って「不妊治療休暇」などの制度が設けられる等、耳にする機会も増えてきました。
とはいえ、「不妊症ってそもそも何?」「原因はどこにあるの?」といった疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、不妊症の定義や原因について、男女別にわかりやすく説明していきます。
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目次
そもそも不妊症とは
「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交渉をしているにも関わらず、一定期間妊娠しない状態を指します。かつては「一定期間=2年」されていましたが、昨今は「1年」とする考え方が一般的です。
ただしこれはあくまで目安であり、年齢などによっては1年を待たず早めに検査や治療を検討すべきケースも多く存在します。
不妊症になりやすい人っているの?
結論から言えば、います。
生理周期が不規則だったり、生理痛が非常に強い、または年齢が高い場合などは、不妊のリスクが高まるとされています。記事の中で紹介する「不妊のリスク因子」に多く当てはまる方は、自然妊娠を待つのではなく、早めの受診をおすすめします。
男性・女性両方に共通する不妊症の原因
そもそも不妊症の原因は何があるのでしょうか。

生殖医療の必修知識:生殖医学会編より
このグラフからわかるように、女性側の原因(卵管因子、排卵因子、子宮因子)が約50%、男性側の原因は35%あります。その他に原因不明が10〜20%程度あり、これが男女共通の不妊の原因と言えます。それでは、ここには何が含まれるのでしょうか。
1. 免疫因子
免疫とは、体内に異物(細菌やウイルス)が入ってくるのを防いだり排除したりして、体を守る働きのことです。通常は細菌やウイルスなどの外敵に対して働くこの免疫反応が、精子に対して起こってしまうと、不妊の原因になることがあります。
男性側の場合は、自分自身の精子に対して免疫反応が起こることで、精子の数が減る「精子減少症」や、精子が確認できない「無精子症」につながることがあります。
女性側の場合は、体内に入ってきた精子の動きを妨げたり、卵子と精子の結合を阻害したり、受精卵の発育に影響を与えると言われています。
女性の抗精子抗体有無は、血液検査で確認することも可能ですが、保険適用外であるうえに、明確に検出されないケースも少なくありません。
2. 原因不明因子
様々な検査を行っても、明確な原因が特定できないケースもあります。そもそも妊娠のプロセスは非常に繊細で複雑であり、体内で起きているすべての現象を医学的に把握・検査が行えるわけではありません。日々研究は進んでいるものの、妊娠に関しては未だに解明されていない部分も多く残されています。
その原因不明の中でも「加齢」は、男女ともにに共通する主要なリスク因子と考えられています。女性は30代から徐々に妊娠率が低下し、特に35歳を越えるとさらに急激に低下します。一方で流産率は年齢とともに上昇します。これは卵子の質の低下や染色体異常の頻度が上がることが大きく影響すると考えられます。
また、かつては「男性の年齢は不妊にあまり影響しない」と考えられていましたが、現在では男性も35歳を過ぎると徐々に精子の質が低下することが明らかになっています。
さらに、ストレスも妊娠に大きく影響します。男女ともに強いストレス状態にあると、排卵や精子の状態が乱れやすくなり、妊娠しにくくなることがあります。
原因不明とされる不妊のでは、他の要因が明確な場合に比べるて妊娠成績が低いという報告もあります。また、不妊期間が長くなるほど原因不明と診断される割合が高くなり、妊娠率も下がる傾向が見られます。
「検査で異常が見つからない=妊娠できる」というわけではありません。年齢が若く、不妊期間が短い場合は一定期間自然に経過を見る選択もありますが、30歳を過ぎていたり、不妊期間が長い場合には、原因が見つからなくても積極的に治療を検討することが望ましいでしょう。
女性の不妊症の原因や危険因子
女性の不妊症の原因には、排卵因子・卵管因子・子宮因子・頸管因子などがあります。
これらを順に説明していきます。
①排卵因子:排卵しにくい、あるいは排卵しない
通常、月経周期が25日〜38日型で、基礎体温が二相性の場合は排卵が起きている可能性が高いと考えられます。しかし、24日以下(頻発月経)、39日以上(稀発月経)、もしくは90日以上無月経が続く(続発性無月経)のような場合は、排卵しにくかったり、そもそも排卵していない可能性があります。
排卵障害の原因は様々で、ホルモンバランスの乱れが関係することも少なくありません。例えば、乳汁を分泌させる「プロラクチン」が過剰に分泌される「高プロラクチン血症」や、男性ホルモンが多く分泌される「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」などが代表的です。
また、大切な試験や職場が変わるなど大きな精神的ストレスがあったり、短期間に大幅なダイエットをして体重が大きく減った場合にも排卵が起きにくくなります。
排卵障害がある場合には、排卵誘発剤(内服薬や注射)を使用して発育を促す治療を行います。
②卵管因子:卵管の通りが悪い
性感染症の一つであるクラミジア感染症は、卵管の詰まりや周囲の癒着を引き起こすことがあり、卵子が卵管に取り込まれにくくなります。また、卵管内には繊毛と呼ばれる細かい毛のような構造があり、この運動によって受精卵を子宮まで運びますが、クラミジアに感染するとこの繊毛運動が障害され、不妊の原因となることがあります。女性の場合は無症状で進行するケースも多く、気づかないうちに悪化していることもあります。
また、過去に盲腸の手術や腹膜炎を起こした経験がある方は、卵管の周囲の癒着が生じていることがあります。
さらに、子宮内膜症も卵管周囲の癒着の原因となり得ます。生理痛が重い、生理の量が増えたといった症状がある方は要注意です。内膜症は超音波で見つかることもありますが、診断が難しい場合も少なくありません。
卵管の通過性については、通水検査や子宮卵管造影である程度の診断が可能ですが。これらの検査は必ずしも正確とは限らず、卵管が通っていても、卵子を取り込む力や受精卵を子宮まで運ぶ繊毛機能が正常かまでは判断できません。
卵管が詰まっていると診断された場合には、卵管鏡下卵管形成術や腹腔鏡での癒着剥離術などの手術を行うことがあります。卵管に水が溜まる「卵管留水症」がある場合は、卵管を切除することもあります。ただし、いったん機能が壊れた卵管は、再度通過させても本来の働きを取り戻せないことが多いため、そのようなケースではは体外受精(IVF)が有効な選択肢となります。
③子宮因子:子宮の形が変形し、着床がうまくできない
30代以降になると、子宮筋腫(子宮の筋肉にできる良性の腫瘍)が見つかる方は珍しくありません。すべての子宮筋腫が不妊の原因になるわけではありませんが、特に子宮の内側に突出する「粘膜下筋腫」がある場合、受精卵が子宮内膜へ着床しづらくなります。また、筋層内筋腫でも、大きさや位置によって子宮の形が変形し、着床や精子の通過を妨げて妊娠しにくくなることがあります。
その他にも、子宮内膜ポリープや、子宮内膜症の一種である子宮腺筋症なども病着床に影響を及ぼすことが知られています。さらに、流産や中絶などの手術などをきっかけに子宮内腔が癒着し、月経量が減少する「アッシャーマン症候群」になると、内膜が薄くなり着床に影響が出ます。
治療としては、子宮筋腫やポリープに対して基本的に手術が選択肢となりますが、闇雲に治療するのが良いとは言えません。手術後には避妊期間が必要になったり、将来的な出産方法に制限が生じたり、子宮破裂のリスクが上がる場合もあります。また、再発の可能性も考慮が必要です。
その他にも、ホルモン剤を使用して一定期間生理を止め、子宮筋腫や腺筋症を小さくする「偽閉経療法」という選択肢もありますが、この期間は排卵が止まるため妊娠はできません。薬をやめるとまた大きくなることもあるため、慎重な判断が求められます。
このように、治療に伴う「タイムロス」が生じるのは妊活において大きな影響を与えることがあります。そのため、治療の適応は妊娠希望の時期や年齢、治療後の計画を踏まえ、慎重に検討することが大切です。例えば、一定期間妊活を続けても妊娠しない場合に治療を検討したり、あるいは体外受精で先に受精卵を凍結保存し、治療後に胚移植を行うといった選択肢もあります。
④頸管因子:排卵の時期のおりものが少ない
通常、排卵が近くなると透明で粘り気のあるおりものが増え、精子が子宮内へ移動しやすい環境になります。しかし、子宮頸がんの治療で子宮頚部を切除した場合や、子宮頸部に炎症がある場合などでは、排卵期の頸管粘液の分泌が減少し、精子が子宮内に届きにくくなることがあります。
このようなケースでは、人工授精(AIH)や体外受精(IVF)が有効な選択肢となります。
男性の不妊症の原因や危険因子
かつては、「不妊の原因は女性にある」と考えられていた時期ももありましたが、現在では、男性側に原因があるケースも全体の約半数にのぼることがわかっています。ここでは、男性側の原因やリスク因子を説明していきます。
①造精機能障害:精子をうまく作れない
精子の数が少ない、まったく存在しない、あるいは精子の運動性などの性状が悪いと、妊娠しにくくなります。多くは原因不明ですが、精索静脈瘤やホルモン異常が関係していることもあります。
造成機能障害は、まず精液検査によって診断されます。
WHOの基準では以下のように定義されています:
・乏精子症:精子濃度が1600万/mL未満
・無精子症:精液検査で精子がいない
・精子無力症:精子運動率が42%未満
原因不明の造精機能障害には、根本的な治療はなく、サプリメントや漢方などで体調を整えながら治療を行うことが一般的です。
精索静脈瘤がある場合は、手術で治療します。また、ホルモンの分泌が低下している場合には、ホルモン剤による補充療法を行います。
無精子症と診断された場合は、精巣内精子採取術(TESE)によって精子の有無を確認します。精子が確認でき場合には、顕微授精(ICSI)を行います。
ただし、いずれの治療も根本的な改善が難しいことも多いため、状況に応じて人工授精や体外受精(顕微授精)がすすめられるケースも多くあります。
②性機能障害:性交渉がうまくできない
勃起障害(ED)や膣内射精障害など、性交渉で射精できないケースを指します。主な原因として、ストレスや性交渉へのプレッシャーのほか、高血圧・糖尿病・心疾患・うつ病・睡眠時無呼吸症候群・慢性腎臓病など、内科的または精神的な疾患が隠れている場合もあります。
治療はカウンセリングを行いながら、必要に応じて内服薬を使用します。喫煙習慣があれば禁煙をすすめ、明らかな肥満や運動不足がある場合は生活習慣の改善指導も行います。
なお、マスターベーションでの採精が可能であれば、人工授精や体外受精を並行して行うことがあります。
③精路通過障害:精子が作られているのに出られない
精子は精巣内で作られた後、精巣上体・精管・射精菅を通過して射出されますが、この経路のどこかが詰まっていると、精子が精液中に出てこない「閉塞性無精子症」になります。
これは、精巣内では精子が正常に作られているにもかかわらず、外に出られない状態です。
原因としては、先天性の両側精管欠損、精巣上体炎後の炎症による閉塞、鼠径ヘルニア手術等がが挙げられます。
治療法としては、閉塞部位を手術で再建する方法や、精巣内の精子を回収して顕微授精を行う方法があります。
なお、精液が出ていても、その中に十分な数の精子がいるとは限りません。精液の中に精子がまったく存在しない「無精子症」は、一般男性の100人に1人、不妊治療中の男性患者さんではさらに多いと言われています。また、精子が存在しても、その数が少ない、運動率が低いといった状態も珍しいことではありません。
「不妊症=女性側の問題」と捉えられがちですが、実際には男性側に原因があることも少なくありません。女性側の検査で異常が見つからず、タイミング法を続けていても妊娠に至らず、後から男性の検査で精子の数や状態に問題が見つかるケースもあります。
妊娠は男女どちらか一方では成り立たないものです。ご夫婦で協力し合い、男性も妊活を意識したら早めに検査を受けることが大切です。
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まとめ
今回は、不妊症になりやすい人の特徴や、男女それぞれに多い不妊症の原因について説明しました。
不妊のリスクはいくつかの要因があり、思い当たる点がある方は、できるだけ早めの受診をおすすめします。
また、原因がはっきりしないケースも珍しくはありません。「原因がない=妊娠できる」というわけではないため、年齢が高い方や不妊期間が長い方は、積極的に治療を検討することが大切です。早めに専門の医療機関で検査や治療を行うことが、妊娠への近道になります。