
もしも自分に精子がなかったら、どう思いますか?
勃起も問題なく、精液もしっかり出ている。若い頃には「もしかして彼女が妊娠したかも…」なんて心配した経験もある。だから、自分は不妊とは無縁だろう。そう思っている男性は少なくないかもしれません。
しかし、「無精子症」は約100人に一人の割合で見られると言われています。
もしかしたら今このページをご覧の方は、実際に病院で「精子がいません」と言われ、頭の中が真っ白になってしまった方かもしれません。「そんなはずない」「なぜ自分が」と、混乱や不安でいっぱいの方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、無精子症の種類や検査・治療法についてわかりやすく解説していきます。
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目次
無精子症とは?
無精子症とは、射精された精液の中に精子が1つも存在しない状態のことです。
精子は「精巣」で作られますが、精液自体は精嚢や前立腺といった膀胱の下にある臓器から分泌されます。そのため、精巣で精子が作られていない場合でも、射精時に精液は出てきます。ただし、精液中に精子が含まれていない場合、比較的透明度の高い精液となります。
近年では、比較的簡単に精子の検査を行うことができるキットも販売されており、自宅でセルフチェックも可能です。心配な方は検査してみても良いですが、精密な診断には医療機関での検査が必要です。
しかし、結婚前に無精子症であることを知ることが良いことであるかどうかは難しいところです。
精子が作られる仕組み
精子は、「精巣」の中で作られています。
精巣内には「精細管」と呼ばれる非常に細い管(直径200マイクロメートル)が複雑に折り畳まれて存在します。精子はこの中で精子の元になる「精巣祖細胞」から精子へと育っていきます。イメージとしては、自分の体を作るための設計図(染色体)を半分ずつに分け、将来子供の体を作るための「半分の設計図」に作り変えている感じです。
この作業には74日かかるとされており、精巣は24時間体制で常にこの作業を続けています。まさに、精巣は「精子を生産し続ける向上」のような存在なのです。
無精子症の検査・診断方法
「あるものを確認する」のは簡単でも、「ない」と断定するためには慎重な確認が必要です。
通常、精液検査では精液の一部を顕微鏡で観察し、精子の数(濃度)や動き(運動率)を測定しています。ところが、その一部の中に精子が見つからなかった場合でも、他の部分に精子が存在する可能性があるため、精液全体に精子が本当に存在しないかどうかを確認する必要があります。
そのため、提出された精液を遠心分離して、その中に精子が含まれてないかを詳しく調べます。
そして、異なる日に2回精液検査を行い、2回とも精子を確認することができなければ、「無精子症」と診断されます。
無精子症と診断された場合には、原因を詳しく調べるために以下の検査が行われます。
・超音波検査:精子をつくる臓器である精巣の状態を調べます
・ホルモン検査:精子をつくるために必要なホルモンの量を血液で調べます
・遺伝子検査:精子をつくるための「設計図」である染色体や遺伝子に異常がないか確認します
無精子症の種類
無精子症は、「精子が作られているのに、体外に運ばれない」タイプと、「精子をうまく作ることができない」タイプに大きく分けられます。
一方で、**「非閉塞性無精子症」**は、そもそも精子を作る機能に障害がある状態です。原因としては、染色体や遺伝子の異常、精索静脈瘤などが挙げられますが、多くの症例では、明確な原因が特定できないこともあります。
ここでは、比較的頻度の高い染色体異常についてご説明します。
染色体は細胞の核内にあり、複数の遺伝子を含む構造体です。遺伝子は、体をつくるための「設計図の文章」に相当し、染色体はその文章が書かれた「本」にたとえることができます。この「本のセット」が正しくそろっていなければ、精子をつくる機能にも影響が出ます。
人間の染色体は通常46本あり、1番から22番までの常染色体が2本ずつ、そして性染色体(XとY)が1本ずつ含まれ、男性では「46,XY」、女性では「46,XX」と表記されます。
このうち、たとえば**X染色体が1本多くなる「47,XXY」**という染色体異常(クラインフェルター症候群など)は、無精子症の原因として知られており、こうした染色体の数の異常が、精子形成に深く関与するケースがあります。
無精子症の治療方法
非閉塞性無精子症の場合、残念ながら精子が自然に出てくるようにする治療法はありません。一方で、非閉塞性無精子症では、精子を運ぶ経路(精路)の途中が塞がっているため、その部分をバイパスして精子を通す「精路再建手術」によって、射出精液中に精子が出てくるようにすることが可能な場合があります。
ただし、閉塞性無精子症であったとしても、先天的に精管が存在しない「先天性精管欠損症」の場合は、精路再建の手術を行うことはできません。また、閉塞部位が特定できないケースでは、手術を行なったとしても必ずしも精液中に精子が出現するとも限りません。
仮に精子が出現したとしても、自然妊娠できるレベルの精子が出現しなければ、顕微授精を行うことになります。
こうした背景から、閉塞性無精子症に対しても、近年では精巣内から直接精子を回収し、その精子を用いて顕微授精を行うTESE-ICSI(testicular sperm extraction – Intracytoplasmic Sperm Injection)が広く行われております。
しかし、日本国内で「精路再建手術」を適切に行うことができる施設は限られています。また、手術後すぐに十分な精子が得られるとは限らず、手術の適応目安としては、配偶者の年齢が35歳以下であることが推奨されています。晩婚化が進む現在ではそもそも、精路再建よりもTESE-ICSIを選択するケースが多くなっています。
一方、非閉塞性無精子症では、手術用の顕微鏡を用いて清掃の中から精子を探し出すMD-TESE(Microdissection Testicular Sperm Extraction)が唯一の治療方法です。手術により精子が回収できれば、その日のうちに速やかに精子を凍結します。
ただし、精巣内から回収した精子は自力で受精することができないため、この精子を用いてお子様を作るためには、配偶者から採取した卵子と組み合わせ、顕微授精を行う必要があります。採卵後、凍結保存していた精子を融解し、受精を試みます。
このように、精子が回収できれば挙お子様授かる可能性はありますが、実際に精子の回収率は約30%と決して高いものではありません。さらに、その回収された精子を用いて顕微授精を行ったとしても、妊娠率は約30%、出産率は約25%と報告されています。
つまり、精子が回収できたとしても、最終的にお子様を授かることができるのは約4人に1人の割合と言われています。
無精子症の手術後の対応
無精子症の治療で手術を検討する際、患者様からよくいただくご質問としては、
・「手術って痛いですか?」
・「これまで手術を受けたことがなく不安です」
・「仕事はどれくらい休めばいいですか?」
といったものがあります。
手術中の痛みに関しては、麻酔によってしっかりとコントロールできますので、ご安心ください。ただし、術後には「ボールが精巣にぶつかったときのような痛み」を感じることがあります。この痛みは、日帰り手術でも入院手術でもほぼ同様に生じます。
術後の痛みの程度や続く期間は個人差がありますが、多くの方は数日以内に軽快し、1週間ほど経つ頃には、立ち上がったり座ったりするときに少し気になる程度まで落ち着いてきます。
また、皮膚を切開して行う手術である以上、
・感染
・出血
といった合併症のリスクが一定程度あります。
さらに、この手術に特有の注意点として、精巣で作られる男性ホルモン(テストステロン)の分泌が一時的に低下する可能性もあります。ただし、閉塞性無精子症の方の場合は採取する組織がごく少量で済むため、ホルモンの低下リスクはほとんど心配いりません。
手術後の過ごし方やお仕事への復帰時期などについては、医師とよく相談しながら無理のないスケジュールを立てることをおすすめします。
松本レディースIVFクリニックは男性外来も受け付けています
松本レディースIVFクリニックでは、当院で治療を行っている閉塞性無精子症の方に対しての手術を行なっております。
閉塞性無精子症の場合、回収された精子を用いた顕微授精の成績は非閉塞性無精子症よりも良いことが知られていますので、精巣内精子を用いた顕微授精で多くの方が挙児を得ています。
非閉塞性無精子症の方については、男性不妊を専門に行なっているクリニックへ紹介、精子が回収できれば、精子を当院へ搬送し顕微授精を行うことができます。
まとめ
無精子症と診断され、大変不安な気持ちでこのページをご覧になっている方もいらっしゃるかと思います。
大切なのは、ご自身の状態を正しく知ることです。精巣の超音波検査、ホルモンの採血、染色体や遺伝子の検査などを行った上で、医師とともに治療の選択肢を検討していきましょう。
ネット上には様々な情報がありますが、正確な判断には専門的な検査と医師の診断が不可欠です。
まずは、男性不妊の専門医を受診することから初めてみてください。あなたの一歩を、私たちは応援しています。
文責:寺井一隆
