
「不妊治療は女性が受けるもの」と思っていませんか?
実際には、不妊の原因は女性側だけにあるとは限りません。男性側に原因があるケースや、男女双方に要因が重なっているケースもあるため、妊娠を目指すには、初期の段階からご夫婦それぞれの状態を確認することが大切です。
女性側の検査や治療を進めた後に男性因子が分かると、治療方針を見直さなければならず、結果として治療期間が長くなることもあります。
松本レディースIVFクリニックでは、婦人科、男性外来、培養室が連携し、女性側と男性側の双方にアプローチしながら、ご夫婦の検査結果や年齢、治療歴に応じた治療方針を検討しています。
今回は、男性不妊の原因や検査方法、夫婦で同時に治療を進めるメリット、男性因子がある場合に検討される顕微授精について解説します。
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目次
不妊の原因は、女性側だけにあるとは限りません
妊娠は、卵子と精子が出会い、受精した胚が発育して子宮内膜に着床することで成立します。この過程には、女性側だけでなく男性側の状態も深く関係しています。
男性不妊の主な原因は、次の3つに分けられます。
- 造精機能障害:精子を十分に作れない、または精子の運動性や形態に問題がある
- 精路通過障害:精子は作られているものの、その通り道がふさがっている
- 性機能障害:ED(勃起障害)や射精障害などにより、性交や採精が難しい
このほか、精索静脈瘤、ホルモンの異常、染色体や遺伝子に関する要因などが関係していることもあります。
男性不妊は、自覚症状がないケースも少なくありません。精子の状態は外見から判断できず、体調、睡眠、発熱、ストレス、生活習慣などによって変動することもあります。
女性側だけが検査や治療を続けるのではなく、男性側も早い段階で検査を受けることが、不妊の原因を正しく捉える第一歩です。
夫婦で同時に調べることが、治療の遠回りを減らします
夫婦で同時に不妊治療を進めることは、最初から体外受精や顕微授精を選ぶという意味ではありません。
ご夫婦それぞれの状態を早い段階で確認し、妊娠の可能性が低い治療を漫然と繰り返さず、必要な治療を適切な時期に選ぶことが目的です。
たとえば、女性側に大きな問題が見つからなくても、精子の数や運動率が著しく低い場合には、タイミング法や人工授精では十分な効果を期待しにくいことがあります。
一方、男性側に大きな問題がなく、女性の年齢や卵管、排卵の状態にも問題がなければ、すぐに高度生殖医療へ進まず、タイミング法などから始められる場合もあります。
治療方法を検討する際には、次のような情報を総合的に確認します。
- 女性の年齢や卵巣予備能
- 排卵、卵管、子宮の状態
- 精液量、精子濃度、運動率、前進運動率
- ご夫婦の不妊期間
- これまでに受けた治療とその結果
- ご夫婦の希望や生活環境
女性側と男性側の検査を並行して進めることで、不妊の原因を多角的に捉え、ご夫婦に合った治療方針を早い段階から検討しやすくなります。
精液検査と男性外来で、男性側の原因を調べます
男性側の状態を確認する基本的な検査が、精液検査です。
精液検査では、精液量、精子濃度、総精子数、運動率、前進運動率、精子の形態などを確認します。松本レディースIVFクリニックでは、SMASという精子運動解析装置を用いて精液の状態を測定しています。
ただし、検査結果が基準値を下回っていたからといって、直ちに自然妊娠が不可能と判断されるわけではありません。反対に、基準値を満たしていれば必ず妊娠できるというものでもありません。
精液所見は、検査時の体調や禁欲期間、発熱、睡眠、ストレスなどによって変動します。そのため、一度の結果だけで判断せず、必要に応じて再検査を行います。
また、精液検査だけでは、精索静脈瘤やホルモン異常など、精子の状態を低下させている原因まですべて把握できるわけではありません。
当院では、泌尿器科の生殖医療専門医による男性外来を設けています。複数回の検査で精子濃度や運動率の低下が続く場合、無精子症や重度の乏精子症が疑われる場合、EDや射精障害などのお悩みがある場合には、専門的な診察を行います。
原因によっては、生活習慣の見直しや薬物療法、精索静脈瘤に対する治療などを検討できる場合があります。
一方、男性側の改善を待つことが、すべてのご夫婦にとって適切とは限りません。女性の年齢や卵巣機能を考慮し、男性外来での診療と女性側の不妊治療を並行して進めることもあります。
顕微授精では「方法の新しさ」より、安定した技術が重要です
顕微授精(ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injection)とは、胚培養士が精子を1個選び、細いガラス針を使って卵子の細胞質内へ直接注入する受精方法です。
通常の体外受精では、採取した卵子の周囲に調整した精子を置き、精子が自ら卵子へ侵入して受精するのを待ちます。
一方、顕微授精では、精子が卵子の周囲の細胞や透明帯を通過する過程を医学的に補助します。
顕微授精は、主に次のような場合に検討されます。
- 精子の数が少ない
- 精子の運動率や前進運動性が低い
- 正常な形態の精子が少ない
- 凍結精子や精巣から採取した精子を使用する
- 通常の体外受精で受精率が低かった
- 過去に受精しなかった、または受精数が極端に少なかった
- 受精障害が疑われる
顕微授精には、卵子の細胞膜を針の操作によって通過する「従来法ICSI(コンベンショナルICSI)」と、微細な振動を利用する「ピエゾICSI」などがあります。
つまり、ピエゾICSIは顕微授精とは別の治療ではなく、顕微授精を行うための方法の一つです。
従来法ICSIとピエゾICSIでは、使用する機器や卵子の細胞膜を通過する方法に違いがあります。しかし、当院では、どちらの方法を用いても顕微授精の治療成績に大きな差はありません。そのため、ピエゾICSIを一律に「より優れた方法」と位置づけているわけではありません。
顕微授精で重要なのは、方法の名称や新しさではなく、それぞれの手技を胚培養士が正確かつ安定して行えることです。
当院では、患者さまの卵子や胚を取り扱う前に、胚培養士の技術が一定の基準に達しているかを確認する力量評価を行っています。従来法ICSI、ピエゾICSIのどちらを用いる場合も、安定した成績を維持できるよう、培養室全体で技術と品質を管理しています。
なお、顕微授精は精子そのものの質を改善する治療ではありません。精子が卵子へ侵入して受精する過程を補助する技術です。男性側に精子の状態を低下させる原因がある場合には、男性外来での評価や治療と合わせて考える必要があります。
ご夫婦に合った治療を選ぶことが、結果的な近道になります
不妊治療では、「段階を一つずつ進めること」が、すべてのご夫婦にとって最適とは限りません。
年齢が若く、不妊期間が短く、精液所見にも大きな問題がなければ、タイミング法や人工授精から始められる可能性があります。
一方、精子数や運動率が著しく低い場合や、女性の年齢・卵巣機能を考慮して治療を急ぐ必要がある場合には、早い段階から体外受精や顕微授精を検討することがあります。
大切なのは、治療法を一律に決めるのではなく、ご夫婦それぞれの検査結果、これまでの治療歴、治療にかけられる時間などを踏まえて選択することです。
男性側と女性側の検査を同時に進めることで、次のような判断を早い段階から行いやすくなります。
- タイミング法や人工授精から始めるか
- 男性側の治療による改善を待つか
- 男性側の診療と女性側の不妊治療を並行するか
- 体外受精や顕微授精へ進むか
- 通常の体外受精と顕微授精のどちらを選ぶか
男性不妊へのアプローチと女性側の治療を別々に考えるのではなく、ご夫婦を一つの単位として治療方針を検討することが、必要性の低い治療を繰り返す期間を減らし、結果的に妊娠への近道となる可能性があります。
男性不妊にも同時に向き合い、ご夫婦に必要な治療を選ぶ
男性不妊は、決して珍しいものではありません。しかし、男性側には自覚症状がないことも多く、女性だけが検査や治療を続けた後に、男性因子が明らかになるケースもあります。
治療期間を必要以上に長引かせないためには、女性側と男性側のどちらか一方だけを見るのではなく、早い段階からご夫婦それぞれの状態を確認することが大切です。
池袋の松本レディースIVFクリニックでは、婦人科、男性外来、培養室が連携し、女性の年齢や卵巣機能、男性の精液所見、これまでの治療結果などを総合的に確認しながら、治療方針を検討します。
また、当院へ通院されている女性患者さまのパートナーを対象に、毎週木曜日の午後に男性不妊外来を行っています。
男性因子が認められる場合には、専門医による診療とともに、必要に応じて顕微授精を検討します。顕微授精には従来法ICSIとピエゾICSIなどの方法がありますが、当院では、どちらの方法を用いても治療成績に大きな差はありません。
手法の名称だけを重視するのではなく、院内基準を満たした胚培養士が、正確かつ安定した技術で実施できる体制を整えています。
「どちらに原因があるか」を責めるのではなく、「お二人にとって、どの方法が妊娠への近道になり得るか」を一緒に考えること。それが、松本レディースIVFクリニックの目指す、ご夫婦を中心とした不妊治療です。