
2022年4月から保険適用となった体外受精は、現状で最も妊娠率の高い治療法です。内服薬や注射で卵胞を育てて採卵し、正常受精した受精卵を培養し、育った胚を移植することで一連の治療が完結します。
しかし、良好な胚が育つにも関わらず、最後のステップである「移植」を何回も繰り返しても、なかなか妊娠に至らない方がいます。その背景の一つとして考えられるのが、**着床障害(着床不全)**です。
今回は、その着床障害(着床不全)とは何か、その原因や検査、治療方法について解説します。
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着床障害(着床不全)とは
着床障害(着床不全)には、胚移植回数や移植個数に関する明確な定義はありませんが、少なくとも良好胚を2〜3回移植しても妊娠が成立しない場合を指すことが一般的です。
日本における体外受精・胚移植の妊娠率は、1回の移植あたりおよそ30〜40%とされており、タイミング法や人工授精の妊娠率である5〜10%と比べると明らかに高くなっています。これは、体外で育てた良好な胚を選別して移植できることにあります。受精しなかった胚やうまく育たない胚を除外できるため妊娠率は高くなりますが、それでも着床に至らないことがあり、妊娠率は100%にはなりません。
着床障害(着床不全)の原因としては、胚側の問題と子宮側の問題の両方が考えられます。着床は体内で起こる現象であり、その瞬間をリアルタイムで追うことはできないため、現在も未解明な部分が多い分野です。
そのため、現時点では「着床不全に対する確率された検査法・治療法」が完全に定まっているわけではなく、少しでも着床率を改善するために多くの検討が続けられています。
着床障害が起きる原因
①子宮の形態異常
子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなどにより子宮の形が変形する
②帝王切開瘢痕症候群
帝王切開の既往がある方で、切開創に液体が貯留し、着床を妨げる
③アッシャーマン症候群
流産や中絶の際の子宮内膜搔爬術、帝王切開などの手術、または子宮内膜の炎症により、子宮内膜に癒着が起きる
④慢性子宮内膜炎
子宮内膜に持続的な炎症がある
⑤着床の窓のズレ
受精卵を受け入れる時期(着床の窓)がずれている
⑥免疫の異常
受精卵を異物として認識し、免疫反応が働いてしまう
⑦胚側の問題
受精卵がうまく孵化できない、あるいは受精卵自体に染色体異常がある
着床障害の検査・治療方法
着床障害の検査
①超音波検査、MRI検査
超音波やMRIによる画像評価で、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、帝王切開瘢痕症候群など、子宮の形に問題がないかを調べます。子宮筋腫がある場合などには、子宮の異常な蠕動(動き)を確認することあります。
②子宮鏡検査
子宮鏡という細いカメラを用いて、実際に子宮内を観察します。子宮内膜ポリープ、中隔子宮(子宮内部に本来ないはずの薄い膜状の壁が存在すること)、アッシャーマン症候群(子宮内膜の癒着)、慢性子宮内膜炎の有無などを確認します。
③ERA検査、ER Peak検査
着床の窓のズレがないかを調べる検査です。子宮内膜は常に受精卵を受け入れるわけではなく、受け入れに適した時期があると考えられています。着床の窓が開いていない時期に移植をしても着床はできません。その窓の開いている時期には個人差があるため通常の移植周期と同じように薬で周期を調整し、本来移植する予定の日に子宮内膜の組織を採取して遺伝子を調べ、適切な時期かどうかを判断します。
④EMMA/ALICE検査、子宮内フローラ検査
ヒトの体にはさまざまな菌が存在し、良い影響を与えるものもあれば、病気の原因になるものもあります。子宮内にもさまざまな菌が存在しており、善玉菌が少なかったり、炎症の原因となる菌がいたりすると、着床率が低下することがわかってきています。これらの検査では、子宮内の細菌叢を調べることができます。
⑤CD138検査
慢性子宮内膜炎とは、持続的に子宮内膜に炎症が起きる疾患で、着床不全の方の30〜60%に認めると言われています。ただし基本的に無症状であり、一般的なスクリーニング検査では診断することができません。CD138検査では子宮内膜組織を採取し、免疫染色によって慢性子宮内膜炎に特徴的な細胞がいないかを調べる検査です。
⑥免疫の検査
ヒトの体には、異物を敵とみなして排除しようとする免疫機能が備わっています。受精卵は半分が父親由来であり母体とは異なる遺伝子を持つため、理論上は免疫により排除される可能性がありますが、通常は「免疫寛容(免疫の攻撃から守られること)」が起きることで着床・発育が可能になります。この免疫機能(Th1/Th2比、NK細胞、ビタミンDなど)に異常がないかを調べる検査です。
⑦PGT-A
子宮側に問題がなくても、受精卵の染色体に異常があれば着床しない、あるいは着床できても発育が停止してしまいます。染色体は人の体を作る設計図のようなもので、そこにエラーがあると組織や臓器を正しく作ることができないためです。PGT-Aは、胚の胎盤になる細胞を一部採取し、染色体数に異常がないかを調べる検査です。これにより、着床しない、あるいは流産の可能性が高い胚を事前に把握することができます。
着床障害の治療
①子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腺筋症などの子宮の形態異常
上記のように子宮の形が変形することで着床障害の原因と考えられる場合、手術やホルモン治療が選択されます。ただし、いずれの治療でも3〜6か月程度の避妊期間が必要になることがあり、女性の年齢によってはその時間的影響が無視できないこともあります。そのため、手術やホルモン剤などの治療前に、あらかじめ複数の胚を凍結しておく「貯胚」を行うことがあります。 特に子宮筋腫や子宮腺筋症に対して手術を行う場合は、将来的に出産方法が帝王切開となる可能性が高まることや、妊娠中の子宮破裂リスクが上がることもあるため、適応は慎重に検討する必要があります。
②帝王切開瘢痕部症候群
1人目を帝王切開で出産した場合、まれにその手術で切開した傷に貯留する液体が着床に影響を与えている場合があります。この場合は、子宮鏡や腹腔鏡などを用いた手術でその部位を部分切除し、縫合することがあります。
③アッシャーマン症候群
子宮鏡を使用して癒着を剥離する手術を行います。再癒着を防ぐために、手術後しばらく癒着防止の器具を子宮内に挿入し、ホルモン剤の投与を行います。
④慢性子宮内膜炎
慢性子宮内膜炎が疑われる場合には、子宮内の菌の組成を調べ、その菌に応じた抗生剤を投与して治療します。また、善玉菌である乳酸菌が少ない場合は、それを増やすサプリなどで子宮内環境を整えます。
⑤免疫異常
免疫異常が疑われる場合には、免疫を抑える薬を内服します。また、ビタミンDには異常に上昇した免疫機能を適切に抑制する効果があるとされており、サプリメントでビタミンD濃度を補うことがあります。
⑥胚側の問題
着床時期をコントロールする必要がある場合は、卵巣刺激を行う採卵周期での新鮮胚移植ではなく凍結胚移植を選択することで、より適切な時期・ホルモン状態に合わせて移植することが可能になります。
また、初期胚(3日目胚)移植では、妊娠しなかった原因が「胚の発育が途中で停止している」なのか「子宮側の問題」なのか判別sにくいため、胚盤胞まで育ててから移植することことも重要です。さらに、移植の際にヒアルロン酸を多く含む培養液を使用したり、アシステッド・ハッチング(透明帯にレーザーなどで切れ目を入れ、孵化を助ける方法)などのオプションを追加する方法もあります。
ERA検査やER Peak検査で着床の窓のズレが確認された場合は、その結果に基づいて移植時期を調整することも必要です。
このように、着床不全にはさまざまな原因が考えられ、検査や治療も多岐にわたります。上記で説明している検査・治療の中には、保険適用外のものや先進医療に含まれるものもあります。保険診療では、保険と自費を同時に行うことは混合診療となり原則認められていません。そのため、一部でも自費診療を行う場合は、採卵や移植も含めすべて自費診療で行う必要があります。
一方、先進医療は、特別に保険と併用が認められた自費診療であり、採卵や移植自体jは保険で行い、先進医療として認められた検査・治療のみ自費で追加することができます。ただし、実施するには適応条件を満たしていないと行えないものもあります。
実施できる検査や治療、導入している先進医療は施設によって異なるため、通院中の病院でどのような検査を受けられるか相談してみましょう。
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まとめ
今回は、着床障害(着床不全)について解説しました。
体外受精という治療法そのものは確立されつつありますが、着床という現象については、まだ十分に解明されていない部分が多く残されています。それでも、この10年ほどの間に多くの検査や治療法が考案され、着床率を高めるための方法についても一定のエビデンスが蓄積されてきました。
移植を繰り返してもなかなか上手くいかず悩んでいる方は、通院先の病院でどのような検査・治療が受けられるのか、一度相談してみるとよいでしょう。