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顕微授精のリスクは?胎児への影響や問題点はある?

2026.05.05

顕微授精のリスクは?胎児への影響や問題点はある?

不妊治療において「体外受精」は一般的な選択肢となりましたが、今でも「漠然とした不安」や「リスクへの懸念」を感じる方は少なくありません。特に、より高度な技術を用いる「顕微授精」に対しては、特殊な治療法というイメージから抵抗感を持つ方もいらっしゃいます。しかし顕微授精は、受精に課題があるおふたりにとって非常に有効な、確立された治療法です。
今回は、顕微授精の仕組みや対象となる方、そして多くの方が気にするリスクや安全性について、最新の知見をもとに分かりやすく解説します。

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顕微授精とは?

顕微授精は、採卵した卵子を受精させる方法の一つです。顕微鏡下で、形や運動精査によって選び抜かれた「最も状態の良い1匹の精子」を、極細の針で直接卵子の中へ注入します。医学的には「卵細胞質内精子注入法(ICSI)」と呼ばれます。

ふりかけ法(コンベンショナルIVF)との違い

通常、まずは「ふりかけ法」が検討されます。これは、卵子の入った容器に一定数の精子を加え、精子自らの力で受精するのを待つ、より自然に近い方法です。
しかし、以下のようなケースでは、顕微授精が非常に有効な手段となります。

   ・男性因子:精子の数や運動率が基準より低く、自力での受精が難しい場合
   ・受精障害:前回のふりかけ法で、卵子に精子が入り込めず受精率が低かった場合

 

当院では、顕微授精の精度をさらに高める先進医療として、PICSI(ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術)を導入しています。これらは「先進医療」として認められているため、保険診療と併用して受けることが可能です。また、東京都の助成金制度を利用することで、費用の7割(最大15万円)が助成対象となります。最新技術を活用し、費用を抑えながらより精度の高い治療を選択いただけます。

顕微授精の方法と流れ

① 採卵

卵巣内から卵子を採取し周囲の細胞を丁寧に取り除き洗浄します。その後、顕微鏡下で受精に適した「成熟卵」選別します。

② 精子の調整

採取した精液から、受精能力の高い「元気で形の良い精子」を回収します。
当院では、主に以下の手法を組み合わせて調整を行っています。

密度勾配遠心法:細胞の密度の違いを利用して、元気な精子と、未熟精子・死滅精子・白血球などを分ける方法です。
スイムアップ法: 精子が自ら泳ぎ上がる力を利用し、最も運動性の高い精子を回収する方法です。

また、精巣内から手術で取り出した精子の場合、動いている精子が確認出来ないケースも少なくありません。そのような場合、「ペントキシフィリン」という薬剤を用いて精子の活性を促すことで、顕微授精(ICSI)に最適な精子を確実に見極めています。

③ 受精(顕微授精の実施)

選別した精子の動きを止めた後、極細のガラス針(インジェクションピペット)に精子を吸引して、卵子の細胞質に針を慎重に差し込み、精子を直接注入します。その際、将来の細胞分裂に欠かせない「紡錘体(ぼうすいたい))」という、受精卵の分裂に必要不可欠な構造体を損傷しないよう位置を正確に見極めながら細心の注意を払って操作を行います。

④ 胚培養

顕微授精を実施した後の受精卵(胚)は、培養液に入れた後、母体の環境を再現した専用の培養器内で5-6日間大切に育てます。当院では、タイムラプス機能付き培養器を導入しており、定点カメラで観察をし続けるため、発育確認のために培養器から取り出す必要がありません。胚にストレスを与えず、環境変化を最小限に抑えることで、より良好な胚へと育つ可能性を高めています。

⑤ 胚移植

5〜6日目まで育った胚を、専用のカテーテルを用いて子宮へもどします(移植といいます)。採卵のような針を使った処置ではないため、麻酔は不要で、痛みもほとんどありません。リラックスして施術に臨んでいただけます。

顕微授精の代表的なリスク

顕微授精は、自然に近い受精方法(ふりかけ法)では妊娠が難しいご夫婦にとって、妊娠の可能性を広げるための重要な治療選択肢です。主に以下のようなケースで行われます。

     受精障害:ふりかけ法を行ったものの、受精率が低かった場合
     重度の男性因子:精子の運動率や数が極端に少ない場合
     無精子症:精巣から直接精子を回収する必要がある場合

などがあります。
上記を踏まえたうえで、顕微授精のリスクについて説明します。

① 卵巣過剰刺激症候群

体外受精や顕微授精では、排卵誘発剤(内服や注射)をして沢山の卵子を育てます。特に、顕微授精が必要な「受精率が低い」や「手術などで精子の数が限られている」などのケースではできるだけ多くの卵子を採りたいと考える方もいます。
しかし、卵巣に強い刺激を与えすぎると「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」が起きる可能性があります。これは卵巣が過剰に腫れ、激しい腹痛を伴う「卵巣捻転(ねじれ)」や、脱水症状による「血栓症(脳梗塞)」を招くリスクを孕んでいます。

 

当院ではこれらのリスクを未然に防ぐため、患者様の状態に合わせてお薬の量をきめ細かく調整しています。また、多くの卵胞が育った場合には、その周期の移植を避け、すべての胚を一度凍結。お身体の状態がしっかりと落ち着いてから移植を行うことで、安全性を最優先した治療を徹底しています。

② 採卵に伴うリスク

顕微授精をするためには卵子を卵巣から取り出さなければなりません。通常、採卵は普段の診察で使うような腟から入れる超音波の機械に専用の極細針を付け、腟壁から卵巣に刺して、卵子を吸引する手技です。非常に繊細な操作を要するため、以下の合併症が起こる可能性があります。

A) 出血

膣壁や卵巣からの出血(膣出血0.01〜18.8%、腹腔内出血0.06〜0.36%)が起きます。ほとんどは圧迫や時間の経過で自然に止まりますが、稀に止血処置が必要となるケースもあります。

B) 麻酔による合併症

麻酔を使用する場合、ごく稀に麻酔に対するアレルギーや呼吸抑制などが生じる可能性があります。

C) 感染症

本来お腹の中は無菌ですが、膣には雑菌がいます。針を刺す過程で雑菌がお腹のなかに移動し、感染を起こす可能性があります。その頻度は0.03〜0.77%とされています。子宮内膜症や腹膜炎の既往がある方は可能性が高まります。

D) 他臓器損傷

卵巣の周りには腸や膀胱、尿管などがあります。卵巣の位置によってはそれらを傷つけることがありますが、その頻度は0.01〜0.1%と稀です。

③ 双子のリスク

顕微授精で育った胚を、1つだけ戻した場合でも稀に一卵性双生児(双子)になることがあります。産婦人科学会のデータで、胚を一つ戻し、成立した妊娠でも双子以上(多胎)となる確率は0.8%で、自然妊娠で一卵性の双子以上になる確率(約0.4%)の2倍にあたります。
双子の妊娠は、母子ともに非常に高いリスクを伴います。

・赤ちゃんのリスク:早産による脳性麻痺や壊死性腸炎などの重篤な合併症、また発育遅延や体内死亡のリスク。
・お母様のリスク:重症の妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、胎盤早期剥離、そして長期間の管理入院など。

「多胎妊娠は親子の一生に関わる」という重い事実を、私たち生殖医療に従事する者は常に肝に銘じています。
当院では、お母様と赤ちゃんの安全を最優先に考え、多胎妊娠を未然に防ぐための慎重な胚選択と移植に努めています

④ 費用の問題

不妊治療の保険適用により、顕微授精も3割負担で受けられるようになりました。
ただし、通常の受精方法(ふりかけ法)の費用に加え、顕微授精を行う卵子の個数に応じて1.5〜4万円程度の加算費用が発生します。

⑤ 精子採取に伴うリスク

無精子症などの場合、精巣から直接精子を採取する手術(TESE)を行います。この手術をしても精子が獲得できないケースや、術後の出血や感染症のリスク、また男性ホルモンが低下する可能性があることから何度も行えないなどの問題があります。

⑥ 次世代への影響

顕微授精の安全性については、世界中で多くの研究が行われています。
現時点では、顕微授精そのものが染色体異常(ダウン症など)や先天奇形(障害児など)を明らかに増加させるという明確な根拠は示されていません。
一方で、日本での調査では男性因子を有する群で尿道下裂が上昇するという報告や、精巣から直接精子を採取する手術を行って得られた精子で妊娠した場合、男児において先天性心奇形や停留精巣などのリスクがわずかに上昇する可能性を示す報告もあります。また、精神発達地帯や自閉症スペクトラムの増加などの報告もあり、安全性についてはいまだ結論が出ていないとされています。重度の男性不妊を持った父親の場合、染色体異常などの原因によっては不育症など流産との因果関係があったり、胎児が男児であるとそれが遺伝するとされています。
そのため、安易な適応拡大は避けるべきという考えがあります。

 

上記のように、安全性についてはまだ未解明な部分もあります。
ただし、一概に「顕微授精はよくない」と決めつけるのは早計です。特に重度の男性因子がある場合や完全受精障害がある場合などは、顕微授精を行わなければ妊娠の確率が極めて低く、場合によっては「顕微授精をするか、子供を持たないか」という選択にならざるを得ない方もいます。30年以上前から顕微授精は治療として行われており、その後沢山の方が治療を受け、無事に出産に至っています。
顕微授精は必要な方にとっては妊娠率を確実に上昇させる非常に効果的な治療となりです。ご自身が適応であるかを専門医と共に慎重に判断し、正しく理解した上で治療を選択することが大切です。

不妊治療のご相談は松本レディースIVFクリニック

当クリニックは、「赤ちゃんが欲しいのになかなか授からない」と悩んでいらっしゃる方のための不妊治療専門クリニックです。

妊娠希望のある方に、家族計画に基づいて妊娠に向けてのアドバイス・治療を行います。

1999年に開業し、これまで、不妊で悩んでいた多くの方々が妊娠し、お母様になられています。

当院の特徴につきましてはこちらをご参照ください。
https://www.matsumoto-ladies.com/about-us/our-feature/

まとめ

今回は顕微授精(ICSI)について解説しました。
安全性については現在も様々な議論が続いており、安易にすべての方へ行うべき治療ではありませんが、顕微授精でないと妊娠の確率が極めて低い方がいらっしゃるのも事実です。顕微授精の適応となる場合、自然妊娠を待つことで貴重な時間を経過させてしまうリスクもあります。まずは男性も含めてしっかりと検査を受け、現状を正しく把握することが大切です。自分たちにとって最適な治療が何か。不安な点も含め、まずは医師とじっくり相談することから始めてみませんか。
私たちは、お二人が納得して次の一歩を踏み出せるよう、全力でサポートいたします。

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監修医師情報

原口 広史
専門 日本産科婦人科学会産婦人科専門医
日本産科婦人科学会産婦人科指導医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
日本生殖医学会認定 生殖医療指導医
生殖・内分泌
子宮内膜症
子宮腺筋症
着床

お子さんが欲しいという希望や、なかなかできないという悩みに、少しでも手助けできるよう心がけています。
是非、いらっしゃって下さい。

経歴
2006年 東京大学医学部医学科(理科3類)卒業
2007年 焼津市立総合病院
2009年 東京大学医学部附属病院
2010年 焼津市立総合病院
2011年 河北総合病院
2012年 東京大学大学院医学系研究科生殖・発達・加齢医学専攻博士課程
2015年 日本学術振興会特別研究員 DC
着床関連の研究に従事
2016年 大学院博士課程卒業 医学博士
2016年 日本学術振興会特別研究員 PD
2017年 東京大学医学部附属病院 助教
2019年 東京大学医学部附属病院
生殖グループ 総ハウプト
2020年 松本レディースクリニック/リプロダクションオフィス 常勤医師
2021年 松本レディースリプロダクションオフィス 院長
2023年 松本レディースIVFクリニック 院長
田中 智基
専門 日本産科婦人科学会産婦人科専門医
生殖・内分泌
着床

受診や治療自体がストレスにならないように心がけています。
なかなか授かれない状況で不安や悩みが多い方もいらっしゃると思います。
心折れずに次の一歩を踏み出し続けましょう。
お二人がゴールにたどり着けるように精一杯サポートさせていただきます。

経歴
2011年 東京大学医学部医学科(理科3類)卒業
2011年 東京大学医学部附属病院
2013年 焼津市立総合病院
2018年 松本レディースクリニック/リプロダクションオフィス 非常勤医師
2020年 同 常勤医師
2021年 松本レディースリプロダクションオフィス 副院長
2023年 松本レディースIVFクリニック 副院長
2018年6月に改正・施行された「医療広告ガイドライン」に基づき、当ページは医師免許を持った松本レディースグループの医師監修のもと掲載しています。
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